君を忘れない。
「自分たちの利益の為にしか動かなくなった私達人間を、愚かだと。」
若い芽を摘んで。
憎くもない相手と殺し合いをする。
やらなければやられるなどと、言い訳して。
「両方だ。」
しばらく雨音に耳を済ましていた一平さんが、窓の外を見ながら呟いた。
「え?」
「泣きながら、怒っている。」
「泣きながら…」
早く、戦争なんて終わればいい。
1人でも多くの命が失われる前に。
一平さんが、征ってしまう前に。
想像しただけで、心臓が震えた。
「…まだ怖いのか?」
そんな私の背中を、一平さんは優しく撫でた。
「…一平さんがいれば、私に怖いものなどございません。」
貴方がいれば、それだけで。
だからどうか、お願いです。
私から一平さんを、奪わないで下さい。