君を忘れない。
六、桜散。
終戦から、一年。
少しずつではあるが、日本も立ち直ろうとしていた。
ただ私の隣に、彼はいない。
一平さんは、還ってこなかったのだ。
たとえもう二度と、会うことができなくても。
私は変わらずに、貴方のことを想っています。
そう伝えることが出来たなら。
「喜代!大変!」
畑仕事をしていた私の元へ、お母さんが叫びながら駆け寄ってきた。
「なに、そんなに慌てて…」
「雨竜さんよ!雨竜さんがきたのよ!」
「え…」
雨竜?
「落ち着いて、そんなのあり得ない。」
「信じられないのなら、自分の目で確かめてきなさい!居間にお通ししたから!」
だって…。
だってそうでしょ?
私の知ってる雨竜さんは、戦死した。
今更帰ってくるなんて、あり得ないのだ。