君を忘れない。



まさかと思う反面、期待している自分がいた。



「一平さん…?!」



そう言って、居間に座っている人物を見た瞬間、私は動けなくなった。



「一平さん…?」



居間のちゃぶ台の前に正座している男性の横顔を見た瞬間、懐かしさから胸がとても熱くなるのを感じた。



「あ…突然の訪問、失礼お許しください。」



その人は私へ目をやり、頭を下げた。



ああ。


違う。



この人は一平さんじゃない。



正面から落ち着いてちゃんと見ると、別人だというのは一目瞭然。



「貴女が喜代さん、ですね。」



私のことを、知ってるの?



「…あの、あなたは?」

「申し遅れました。私、雨竜鉄平と申します。」



雨竜…?



それってまさか。



< 65 / 75 >

この作品をシェア

pagetop