君を忘れない。
君に黙って逝く俺を、どうか許してほしい。
そしていつか、全てが終わったその時は、どうか俺を今度こそ忘れてほしい。
君だけは、前に進んでほしい。
平和になったこの国で、君に幸せになってほしい。
こんな俺のわがままを、君はまた許してはくれないだろうか。
出征の日、駅のホームで君の声を聞いた気がした。
思わず振り返った先に君を探したけれど、見つけることは出来なかった。
そもそも、いるはずのない人の声が聞こえたなんて、馬鹿げていると思うかもしれないが、こればかりは仕方がない。
最期の最後まで、君に会いたい。
最後に見た君の姿が、泣き顔だったことがなにより無念である。
願わくば、今後君の笑顔多からんことを。
では、永久にさようなら。
昭和20年8月1日。
麻宮喜代様。
雨竜一平。
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