君を忘れない。
七、君を忘れない。
俺は君を忘れない。
たとえもう二度と、会えなくても。
たとえ君が、他の誰かを愛しても。
――――君が俺を忘れても。
「なぁ、雨竜。」
明日、俺は出撃する。
今夜が最後の夜となる。
「なんだ。」
寝転んだ状態のまま、松田が俺に話し掛けた。
松田も、明日一緒に征く隊の一員である。
「遺書、書いたか?」
「あぁ。」
「俺さぁ…書けねぇんだよ。」
「書けない?」
松田は天井をじっと見つめたままだった。
「なにを書いたらいいのか、分からなくなった。最期に言いたいことなど、ありすぎるようで、実は何もない。」
「恋人か?」
「あぁ」
やはり、みんなそうなのだ。
死ぬ前に恋人に言うことなど、すんなり浮かんで来るはずがない。