ゆら-YURA
チャイムがなると担任の林が入ってくる。
前の席に竜太がやっと座った。
「ゆき。おきろー」
席につくなり竜太は俺の肩をゆすった。
「もう、起きてるよ」
俺は頭を持ち上げるように背もたれに腰をつけた。
竜太と初めて会ったのは小学1年のときだった。
吉野由貴(よしの ゆき)と山崎竜太(やまさき りゅうた)は出席番号は前後で、6歳のときから竜太はよく後ろを向く奴だ。
気さくな竜太はクラス全員と友達になったけど、とくに俺とは仲がよかった。
それから6年間ずっとクラスが一緒だった俺らは必然的に親友になって今にいたる。
チャイムがなるとまた、前の席の背中がくるりと振り返った。
「ゆきー。誕プレって何がいいかなぁ。」
彼女の誕生日が近いらしい。
小学校の3年のときに竜太の隣だった人形のような女の子。
前村のの―、3年のクラス編成で俺たちは一目惚れした。
それから3人でよく遊ぶようになって中学にあがったくらいから竜太と付き合いはじめていた。
竜太はいいやつだからきっと幸せにしてくれるだろう
だから悔しさなんかなくて
すんなりとうけいれることができた。
「旅行なんかいいじゃん。ののが行きたいって言ってたし。てか、俺に聞くなよ。」
「そーゆーなってー。」
チャイムがもう一度なると竜太は俺に背中を向けた。
こいつのいいところは切り替えのはやさだった。