The world of you and me
それから、望月家に行くと一人の男の子がソファーに座っていた。
その男の子…紘は恐ろしく痩せていた。
顔には幾つもの傷があって、服から出ているところの大体に、シップやガーゼが貼ってあった。
瞳には何も映していなかった。
生きようとする意思もなにも。
お父さんや、お母さんが幾ら呼びかけても、その呼びかけにも答えず、ただ私をジーと見ているだけだった。
それから私は毎日望月家に遊びにいった。
けれど、紘は全く喋らなかった。
例えば、何かに躓(つまず)いて転んだときも、私がわざと驚かしたときも、悲鳴一つ上げなかった。
視線を合わさない紘が何処を見ているのか、その視線の先を追って遊んだいた時もあった。
とにかく、静かで気配感がなかったので振り向くといることが度々あった。
喋り相手が欲しくて、喋って欲しくて私は毎回、
「お名前はなんていうの?私ね、小百合って言うの!」
もちろん紘の名前は教えてもらっていたから知っていた。
それでもいつも、いつも、飽きもせず話し掛けては無視されていた。