The world of you and me
だから、紘は話せないのだと思っていた。
まるで人形のような紘。
それでも懲りずに話し掛け続ける私。
ある日。
いつものように話しかけていたらしていたら、
『…さ、ゆ』
初めて紘から合わしてくれた視線、手には温かなぬくもりが伝わった。
そんな紘の目には、少なからず生きたい。という意思があった。
「しゃべったっ!!紘がしゃべった!!!」
嬉しくなり、つい大きな声を出した私に、やはり紘は驚かなかった。
私の大きな声を聞いた、望月夫妻が慌てたような足取りで私達の元に駆け寄った。
紘は手はそのままで、望月夫妻に目線を向け、
『れ、んさんひなさ、ん』
望月 煉ーレン、妃那ーヒナー、これが望月夫妻の名前。
その二人の名前をしっかりと呼んだ。
煉さんと妃那さんが、私ごと紘を強く抱きしめた。
私が家に帰るときに紘が、私に甘えるようにギュッと強く抱きついてきた。
__そんな紘に、抱きしめ返しながらもう二度と紘が傷つかないように、私が傍にいて守ってあげなくちゃ。幼いながらも決意をした。