木漏れ日から見詰めて
 学校で半分死んだような生活をしているよりマシだった。

 ただ、私は痩せていった。

 ごはんをひと口食べるとすぐにしゃっくりが出て、喉に何かがつかえる感覚にとらわれた。

 彼との別れがまだ尾を引いているんだとそのときは簡単に片付けた。

 スーパーでバイトをしているとき、花岡美紀と偶然出合った。

 彼女はすぐに謝り、学校に来なくなった理由を聞いてきた。

「学校が退屈なだけ……かな」
 それとなく言葉を濁した。

「あのね……」
 花岡美紀は彼の赴任先を教えてくれた。せめてもの償いだったのかもしれない。

 バイトをがむしゃらに続けていたら体調を崩して病院へ行くはめになった。

 食欲が減退しているから栄養失調かなと思っていたら医師からは惨酷な告知を受けた。

「食道ガンです」
「えっ?」

「個人の免疫力の問題や熱いもの辛いものを好んで食事する人、アルコールやタバコを長期に渡り続けている中年の男性がなる場合が多いのですが、家で誰かタバコを吸う人はいますか?」
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