木漏れ日から見詰めて
 学校に戻ったところで紺野さんを励ますことさえできないのはわかっている。

 いままでまともな会話をしたことがないし、おれのことなんか眼中にないはず。

 まだ彼女は、無意味な掃除を続けているのだろうか?

 紺野さんのことを想うと切なくなってくる。

 掃除をやめて家に帰っていればそれでいい。

 ぼくは3年2組の教室をそっと覗いた。

 ハッとしてすぐに顔を引っ込めた。

 見てはいけないものを見てしまったような……たったいま目で見たものが現実なのか夢なのかまたは妄想や幻覚なのか整理できない。

 紺野さんと菱沼先生が抱き合っていた。

 噂は本当だった?

 ぼくが呆然としていると花岡美紀が階段を駆け上がってきた。

「どこ行くんだよ?」
 歩み寄り、花岡の前を遮った。

「教室に決まってるでしょ」
「話がある」
 ぼくは花岡の腕を掴んで階段を下りていく。
 
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