木漏れ日から見詰めて
「ちょっと忘れ物くらい取りにいかせてよ」
 花岡は口では拒んだが、制服に皺ができることを恐れたのか力づくで抵抗することはしなかった。

「いい加減にしてよ!」
 ぼくは2階の廊下の突き当たりにある情報処理室の前まで花岡を引っ張った。

 とりあえず紺野さんを守るために花岡を現場から離すことには成功した。

「話ってなに?」
 花岡は不満そうではあるがちょっとは興味があるようで聞く姿勢を示した。

 ぼくは少しでも話を長引かせるために会話のお題を模索したが、頭の中は紺野さんのことで一杯だった。

「紺野さんと菱沼先生がラブホテルへ行ったという噂は本当なのか?」
 必然的に質問内容は紺野さんのことになる。

「なによいまさら」
 同じ質問を繰り返しされてきたのか花岡の口が尖る。

「どうなんだ?」

「わかんないわよ。でも菱沼先生の車に紺野さんが乗ったのは事実だからね」
 花岡が不貞腐れ気味に答えた。
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