木漏れ日から見詰めて

2.無力な自分

 意外にも花岡美紀は嘘をつかなかった。

 ぼくに対する中傷や冷やかしなど裏サイトの掲示板に書き込まれていなかった。

 ひと安心というところだが、花岡に感謝するのもおかしな話だ。

 感謝したり謝ったりすればつけあがるタイプのような気がするからこっちから媚びる真似をするのは控えた。

 花岡のことなんかより紺野さんのことが心配になった。

 2人が抱き合っていたあの日を境に学校に来なくなってしまった。

 自主退学したとの噂もある。

 担任の先生からはなにも説明がない。

 寝ても覚めても考えるのは紺野さんのことばかり。

 家の前を通って偶然出会うことを装うか、それともまわりくどい方法はやめて直接電話をかけてみようかと思ったけど、キモイと思われるのがオチだ。

 紺野さんがいまどうしているのかさえわかればそれでいい。

 こんなときに頼れるのは残念ながら花岡美紀しかいなかった。

 ぼくは学校の帰り道で一人になった花岡の肩を後ろからポンと叩いた。 
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