木漏れ日から見詰めて
「あ、ああ」
 押され気味に返事をした。

「会ったときに菱沼先生の新しい赴任先を教えてあげたの。それから数日して紺野さんがバイトしているスーパーに行ったら辞めていた。なんか嫌な予感がして紺野さんの家に行ってお母さんに聞いたら引越して一人暮らしをはじめたって言われて……」

「もしかして……」
 頭をよぎったのは最悪の事態。

「そう。引越し先を教えてもらったら住所は菱沼先生のいる町になってた」

「紺野さんのお母さんにそのことは教えたのか?」

「まさか……言ったところで娘のことを心配するような母親には見えなかったし……」
 花岡は言葉を慎重に選びながら発言したので悪口には聞こえず、紺野さんを気遣っているようにさえ思えた。

「紺野さんの住所を教えてくれ」

「別にいいけど、会ってどうするの?あなたになにができるの?」

「実際に行動しないとなにもはじまらないじゃないか!」
 追求され、ムキになって答えた。

 花岡に言われるまでもなくぼくは無力だった。
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