雑種と呼ばれて
そこに広がっていたのは、なんとも悲惨な光景だった。
ゴミ、ゴミ、ゴミ。
ビールの空き缶が何十本と転がっている。
そして…
部屋の片隅に、場所を取るまいと体を縮こませている犬が一頭。
「エルだ。オス。」
男性が言った。
「食事は…?」
痩せこけたエルを見て、中島さんが訊いた。
「自分の排便 食ってんだ!
汚ねぇよな!まぁ掃除の手間が省けていいけどな!」
男性は笑った。
中島さんは、怒らなかった。
彼に、何を言っても無駄だと思ったのだろうか。
それとも、一刻も早く、エルを助けたいと思ったのだろうか。
中島さんはエルを優しく撫でた後、ゆっくりと抱き上げた。