雑種と呼ばれて


中島さんは、エルをぎゅっと抱きしめた。


エルは、ずっと飼い主の男性だけを見ていた。


今まで、こんなにも酷い仕打ちを受けてきたにも関わらず、エルは飼い主の男性を信じて見ていた。


曇りひとつ無い瞳で。



「…失礼します。」


そんなエルを連れて、中島さんは部屋を後にした。


僕もひとつお辞儀をして、中島さんの後を追った。





「中島さん…。」


見ると、中島さんの瞳からは涙が流れていた。


「ごめんね、エル。
あなたにとっては、たった1人のご主人様だったのに…。」


「中島さん…。
これからは、僕達がエルの家族ですよ…。」


「…そうね、那智くん。」


そう言って、中島さんは微笑んだ。





これが、僕とエルとの出会いだった。


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