カナリアのウタ
『愛…?…てかいきなりなんなの。あなた』
にこやかに笑う見知らぬ男性。
なんだかイライラした。
「そう、愛。…ねぇ、あると思う?」
なんの話だよ。
入学式への時間があと5分。
『ちょっと、時間がないから』
「あら、…まぁ答えてくれるまで通さないけどね。」
しつこすぎるから、思わず言ってしまった。
私の本音。
『…私はそんな感情持ってないわ。』
でも本当だから仕方ない。愛なんて私は知らないし抱いたこともない。
愛だとか恋だとか邪魔な感情。いつまで経ってもそんな感情に浸り続けるなんて私にはできない。
だってめんどくさいもの。
「へぇ…。そっかぁ…。ありがとね。」
ニコニコと笑う。
うざったい笑み。あぁ腹が立つ。
『…では』
入学式に向かう足を作り、駆ける。
初日に遅刻なんて有り得ない。
体育館へ急いだ。
「愛が無い人の目だねぇ…」
ぼそりと呟く少年の目は光った。
「まぁ…ここで芽生えたらいいさ」
その少年も足取りを進めた。