私は貴方に、叶わない恋をした。




「!!」

「え···おわ!!」


勢いよく扉が開き、ドアノブを持っていた手が準備室側に引っ張られた。



「びびった…」


安定を崩した身体は、準備室へと倒れそうになった。


「あー…良かった」


その身体を受け止めてくれたのはー…




「大丈夫か?」



先生だった。

ドキン!

「…っ」


大きな身体に、すっぽりはまる私の身体。


温かいー…


密着した身体から、先生の心臓の音が聞こえる。

ドクン、ドクン、ドクン。

「…」


心臓の音が早い?

私の?それともー…先生も?




「永井!」


「!」


肩を持たれ、身体が離された。



「あ…ごめんなさい」



夏だというのに、密着していた身体の部分がひんやりと冷たく感じた。


「いや…」



久しぶりに先生と会ったのに…ー


「それより、課題はできたのか?」




まだ一度も、目を合わせてくれない。



「なかなか提出しに来ないから、気になっ…いや、俺もそろそろ帰るから早く提出してくれ」


"帰るからー…"



そんなに、奥さんのいる家に早く帰りたいんだ。




「…永井?」




そうだよね…


当たり前だよね。




奥さんのこと、愛してるんだもん。





< 22 / 92 >

この作品をシェア

pagetop