私は貴方に、叶わない恋をした。
全開に開いた、窓際。
「永井、覚えてるか?入学式のとき保健室まで運んだの、俺だったんだよ」
完成した作品を手持ち、窓の外を見ている。
「…はい」
覚えてるのも、何も…
私が、先生を好きになったきっかけだもん。
「体育館から保健室まで運んで行く間ずっと、弱々しい腕で必死に俺の首にしがみついてたよな」
「…」
それは、知らないなかった。
あの時は意識が朦朧としてて、保健室での出来事しか覚えていない。
「保健室のベッドに寝かそうと思っても、なかなか離してくれなくて大変だったんだぞ」
「…っ…すいません」
「いや…こんなに体調悪くなるまで耐えていたなんて、よっぽど根性のあるヤツが入学してきたなって思った」
「…」
「担任になっても、そう思った。俺の顔を見る度に、何か訴えているような…悩んでいるような…そんな表情をしてた」
「!」
顔に、出てたんだ!!
何故か急に、恥ずかしくなってきた。
「でも、まさか…俺を好きになったから悩んでいたなんて想像もできなかった」
「…っ」
先生を好きになって1ヶ月後に、結婚をしていることを知った。
それから何度も、何度も諦めようとしたけどー…
毎日学校で先生を見る度に、苦しくて…この想いをどうしていいかわからなかった。
「…永井、俺はー…」
ドクン!
やめて…
「俺はー…」
「っ…聞きたくない!」
わかってるから…
もう、答えはわかってるから…
先生の口から、直接聞きたくない。