私は貴方に、叶わない恋をした。



駐車場に着くと、先生の車に乗った。

「何だよ?助手席に乗らないのか?」


「あ…うん」


乗る前に悩んだ。
助手席は、奥さんとか彼女が座る場所って聞くし…

それに…誰かに見られたらー…

「体調悪いフリしとけって言っただろ?」

「あ…」


「大丈夫だから。助手席座れよ」



ぽんぽんっと助手席を叩きながら、先生が言った。




「…はい」



小さな声で返事をすると、助手席へ座り直した。



「変なとこで遠慮するよな」

「だって…」

「周りから見たら、俺たちが付き合ってるなんて思ったりしないよ」

「…そう…だけど」

なんか、それもそれでショックだな…



「泣くなよ?」

「…泣いてない」

「永井は、意外と泣き虫だからな」

「泣き虫!?」

「そう。さっきも、泣いてたじゃん」

「う…」

「ま、そういうとこも可愛いけどな」

「!」


"可愛い"


運転している先生の横顔を見ると、耳が少しだけ赤くなっているのがわかった。



「…」



…どうしよう。




「あ、お前ん家ってさ…」





キスしたい。





< 36 / 92 >

この作品をシェア

pagetop