私は貴方に、叶わない恋をした。






「ねぇ…先生」


「ん?」


「キスしたい」


運転席に向かって、言った。



「…」

ドキン。ドキン。


私の高鳴る胸が、静かな車内に響いてしまいそう。



少しの沈黙の後、先生が口を開いた。


けど、それはー…


「…あー…明日から通常授業に戻るけど、ちゃんと課題やってあるか?」




私が言ったこととは、違う返事だった。


…話を…逸らされた。



「…っ」


どうして?



「提出日に厳しい先生もいるから…」


「…先生、車停めて」


「え?」







「停めてよ!!」




ドクン、ドクンとー…


さっきとは違う、胸の鳴り方。

慌ただしく言ったのに、車はゆっくりと停まった。



…どうして私がそう言ったのか、わかっているかのように。



「…一人で帰る」


ボソッと小さな声で言うと、ドアを開け、車から降りた。



その間、一度も先生の顔を見なかった。



先生もまた…



私を呼び止めることは、なかった。






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