私は貴方に、叶わない恋をした。
小さな階段を上ると、さっきよりも少し高い場所から景色が見える。
「…あついけど」
「太陽に近付いたからな」
「そういうもん?」
「知らん」
適当なことを言い、金髪の男は寝転んだ。
ていうか…
「あなた、何年…なんですか?」
こんな派手な人、今まで見たことない。
「11HR加藤 泰志(かとう やすし)。血液型は、O型。嫌いなものは、勉強と男のせんせー」
「え…同じ学年だったの?でも…」
金髪で目立ってれば、同じ学年なら存在だけでも知ってるはず。
「金髪は、昨日染めた。で、担任に説教くらうのが嫌だからサボリ中」
「あ、そうなんだ…」
「で、あんたは?」
「え?」
「名前と、サボリの理由」
ドキ。
「名前は…14HRの永井 麻由美。理由はー…」
先生に、会いたくなかったからなんて言えない。
麻由美が黙って俯いていると、泰志が起き上がった。
「…昨日、途中で帰っただろ?」
「え!?なんで…」
「昼休みに俺が登校したとき、あんたと下駄箱ですれ違った」
「うそ…」
全然、気付かなかった。
あの時はもう、涙で周りが見えてなかったから。
「泣いてたよね、何かあったの?」
ドクン。
顔を覗き込み、泰志が聞いてくる。
ドクン。ドクン。
「あ…うん?いや…」
真っ直ぐな目で見つめられ、目が泳いでしまう。
「人に言えないこと?」
「え!?いや…そんなことは…」
「だったら、言いなよ」
「う…」
「聞いてやるから。ほら」
言っても、相手が先生だとは思わないよねー…
ぎゅっと自分の手を握りしめ、話し出す。