色をなくした世界
過ぎゆく日々
あれから雪乃には一生に困らないくらいの保険金が入った。



…和哉の命の重さがこれくらいなのかと思うと、お金などいらないから和哉を返してほしいと願った。



「雪乃これはこっちで良いの?」



ボケッとしていれば、引っ越しの準備を手伝いにきてくれていた梓から声が飛ぶ。




「あー。それはあっちの箱にお願い」



それはこっちにちょうだいなどと話していれば、和哉と過ごした家が段々片付いていく。





明日は雪乃の引っ越しの日だ。



やはり雪乃には、この家は思い出がありすぎた。



両親は帰っておいでと言ってくれたが、雪乃は断り梓と暮らす方を選んだ。



家に帰れば過ごしやすいだろうが…親に甘えてしまうと思ったのだ。


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