色をなくした世界
家に帰れば、梓が遅かった雪乃を心配して出てきてくれた。


「雪!!遅かったね?仕事いそ・・・・・」


そこで言葉を切ると梓は雪乃の元に駆け寄る。


「雪?どうしたの?」


泣きはらしたような目に、首の痕・・・・嫌な予感が胸を過る。


梓の顔が首の痕にある事に気付いた雪乃は、一馬には言えなかった事を梓に話し出す。


「アズ・・・・雄大君が・・・・」


その一言で一馬と同じように梓にも分かってしまった。


「それ・・・雄大君が・・・・?」


雄大が雪乃を好きな事には気付いていたし、応援も陰ながらしていた・・・けれど。


「あの男・・・・ぶん殴ってやる・・・」


そう言って部屋を飛び出そうとする梓を雪乃が止める。


「駄目・・・・雄大君は悪くないから・・・」


雄大を庇う雪乃の気持ちが梓には分からない。


「悪くないって・・・雪乃との間に了承もなしに・・・こんな痕つけて?」


雪乃との間に合意がなかったことなど見ればすぐに分かる。


「了承はなかったけど・・・・責めないで・・・・」


顔が曇ってまた泣き出す雪乃を、梓は抱きしめる。その瞬間ビクッとなる雪乃に梓は心の中で雄大を恨む。


(・・・・・こんなに怯えさせて・・・・)
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