色をなくした世界
雪乃が雄大は悪くないと言う限り、梓には何もいう事は出来ない。


けれどこんな雪乃をほっておくこともできず、少し待っててね?と言うと梓はお風呂を沸かしに行った。


「とりあえず・・・お風呂入ろう?温まらないと・・・・風邪ひいちゃうよ?」


昔から雪乃はすぐに熱をだし、それを悪化させ命の境目を行き来していた。


大きくなってからは流石にあまりないが・・・・心配な事に変わりはない。


雪乃が頷くのと同時にお風呂が沸いた音がする。


風呂場まで付いて行き、きちんと肩までつかるんだよと念を押し、梓はリビングに戻った。


お風呂の中に入ってみれば、首から胸にかけての痕が痛々しく・・・雪乃の心を苦しめる。


お風呂に涙がポツリポツリと落ちた。それは止まることなく次から次へと落ちていく。


(雄大君・・・・・)



「うっ・・・ひっく・・・・うぅ・・・・」


お風呂から漏れてくる雪乃の泣き声に梓も泣きたくなる。


「やっと元気になってきたのに・・・・」


雄大の気持ちが分からないわけでもない。恐らく雪乃から一馬との事を聞いたか、勘付いたかしたのだろう。


「そして・・・止まらなくなった・・・・か・・・」


誰が悪いわけでもない・・・。ただタイミングが全て悪かった。
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