色をなくした世界
お風呂から出た雪乃の髪を乾かしてあげながら、梓は雪乃の話を口を挟まず聞いていた。


「雄大君が・・・好きって気付いてた?」


話が一段落した時・・・雪乃は梓の顔を不安げに見ながら聞いてきた。


ここで嘘をつくこともできたが・・・ついてもどうにもならないだろと思い辞めた。


「そうかなとは思ってた」


雄大と和哉と違い、雪乃と梓は違う大学に進学した。その為雄大がいつから雪乃を好きだったかは知らないが・・・梓と雄大が出会った時にはそうだろうなと思っていた。


「他の人はどうか知らないけど・・・私は結構早く気付いてた」


ただ本人が言わないものを私が言うわけにはいかないでしょ?と雪乃に告げれば雪乃の顔は更に酷くなる。


「やっぱり・・・・アズも気付いてたんだ・・・私は全然気づかなかったよ・・・」


雄大が必死に隠していたからだろう。和哉と雪乃には気付かれないように必死に・・・・。


「気付かれたくなかったからだよ。雪乃たちの前ではいつも笑ってたけど、時々雪乃たちを見る目が・・・・」


印象的だった。泣きそうなのに、幸せそうで・・・雪乃と和哉を愛しているのがすごく伝わってきた。


「雪?一つ聞いても良い?」


雪乃が頷けば、梓はまた雪乃を抱きしめてくれる。


いつだって泣いている時、梓は雪乃を抱きしめてくれた。そして居場所をくれたのだ。
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