色をなくした世界
嫌な空気が自動販売機前を支配する。


「昨日・・・」


一馬が空気を打ち消すかのように話し始めた。


「雪乃が行ったんだろ?」


雪乃という呼び方に一瞬声を荒げそうになる。


一馬も一馬で分かっていて言っている。


雄大に思い知らせたかったのだ・・・雪乃は自分のものだと。


いつの間に好きになっていたのか分からない。ただあの海に飛び込んだ日・・・自分と同じ悲しみに囚われ、愛されている事にも気付かない雪乃にムカつき・・・共感してしまった。


誰がいても同じ。



愛した人がいなければ・・・



その思いが痛い程に分かってしまうから・・・自分を見てほしくなった。


それくらい強い思いで自分も思われたいと思ってしまった。


それくらい強い思いじゃないと・・・・忘れられないと思った。


そして目で追っているうちに気付けば気になって気になって仕方がない存在へとなっていた。


雄大の気持ちを知っていたはずなのに・・・・それでも手に入れたいと、あの合コンの日に思ってしまった。
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