色をなくした世界
別れた道
一馬と別れた雄大は青山の席に着ていた。


「青山さん・・・お話が」


そう言うと青山は真剣な顔になる。


雄大は前から青山に九州支社に行ってほしいと言われていた。


最近九州の方でも業績が上がり、誰か本社の人間を寄越してほしいと頼まれ、そこに雄大の名が上がったのだ。


ただ・・・雪乃の側を離れる事が心配で、雄大は返事ができずにいた。


青山は雄大を会社の近くの喫茶店に誘った。


そこは他の店より少し値段が高いため、滅多に使う人間がいない。その為大事な話の時には重宝している店。


「でっ・・・話って事は九州のか」


世間話もなくいきなり核心をついてくる。


「はい」」


そう頷いた雄大の顔を見て、だいたいの返事は分かっただろうが、青山は聞いてきた。


「どうする?」


その目はもう雄大が行くと確信している。


「行きます」


離れようと思った・・・・。


この場所から・・・・雪乃から・・・・。


そうしないと自分は・・・・過ごした時間までも恨んでしまう。


後戻りできないところまできているのだ。
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