色をなくした世界
「泣いて泣いて・・・それでも雪乃は選んだんだろう?俺じゃなく、雄大を。そして雄大も雪乃を選んだ。だったら俺はそんな二人を祝福するよ」


優しい手が雪乃の頭に触れる。


「いつだって雪乃の側には雄大がいただろう?泣いている雪乃が頼るのはいつも雄大だった。それが答えだよ・・・雪乃・・・・」


どこまでも優しい和哉に雪乃はもう涙で顔が見えない。


そんな雪乃の顔を拭いてやった時。


雪乃の周りは綺麗な光に包まれる。


「雪乃時間だよ・・・・」


そう言うと和哉は手を離す。


離された手に不安になり、手を伸ばせば、優しくほどかれる。


「雪乃・・・雪乃を待っている人がいる。そこに帰らなきゃ・・・幸せに・・・」


雪乃は何かを言わなきゃと思うのに・・・涙で声が出てこない。


唯一言えた言葉は・・・


「ありがとう」


和哉が何より好きだった言葉だった。


泣きながら何度も何度も「ありがとう」を叫ぶ雪乃に、和哉は最後の言葉をかける。


「もし天国に着たら・・・雄大を捨てて俺の所にくるんだよ?愛してるよ。いつまでも・・・雄大と雪乃の幸せを・・誰よりも祈ってる」



そう告げると和哉は消えて行った。


その時「手紙は・・・もらっていくよ?」



と聞こえたが・・・この時の雪乃には何のことか分からなかった。

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