色をなくした世界
自分たちには鬼の様に接する青山が雪乃にだけ甘いのはこの一週間でよく分かった事だ。


可愛がられるのは雪乃がとても可愛い事もあるが、小さい身長と、幼い顔立ちのせいもあるだろう。

まるで小さい女の子みたいで、叱れないし、どう接すれば良いのか分からないと始めはぼやいていたが・・・・今では娘を溺愛するお父さん状態。


「あの人は・・・締め切り前の忙しい時に!!!!」


雪乃に怒っても仕方ないと分かっているが、あまりの変わりように怒りたくもなる。


「そんなに怒らないの!心配して見に来てくれたんだから」


何も知らない雪乃は、自分に優しくしてくれる青山が自分のせいで悪く言われるのは嫌だった。


「それに今度歓迎会を開いてくれるって!!!楽しみ!!!」


自分の時にはなかった・・・いやほとんどの社員の時にはなかった歓迎会を雪乃の為には開くのかと思うと、怒りを通り越して呆れてくる。


「歓迎会??俺聞いてないよ?」


青山がさっき思いついた事なので誰も知らないのは当たり前だった。


「そうなの?でも青山さん張り切ってくれてたよ?」


その張り切りを締め切り前の仕事に活かして欲しいが・・・・部下の自分にそんな恐れ多い事言えるはずがなかった。


「じゃぁその内連絡くるかな?」


あまり深く追及することを止めた。こうして少しずつ社会の荒波に揉まれ、人は成長していく・・・はずだ。
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