色をなくした世界
和哉に抱き着き離れない雪乃を、雪乃の母が「和哉君を困らせないの・・・」と引き離す。


その間に和哉は葬儀屋へと運ばれていった。


今日の夜お通夜があり、明日お葬式だと話している両親の声をどこか遠くに感じながら雪乃は意識を手放した。


目を覚ました時・・・和哉の体は綺麗に清められた後だった。


和哉の訃報を聞いた親族や友人、会社関係者が続々と和哉の元に訪れ、最後の別れを惜しんでいる。


誰に対しても優しい和哉は皆に愛されていた。



雪乃も和哉の優しさに惹かれたうちの一人だ。


(何で和哉だったの・・・・何でよ・・・・)


訪れる人を人形の様に見ながら、雪乃は涙を堪えていた。


そこに・・・。


「・・・雪?」


雪乃の親友の梓が駆けつけてきた。連絡を受け走ってきたのだろう梓は、髪は乱れ息は切れていた。


梓は雪乃の元に近付くと力いっぱい抱きしめる。


「雪?雪?私がいるから・・・」


大丈夫?とは聞かない梓の優しさが胸に染みる。
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