色をなくした世界
誰かが海に入る音がした。


その音はだんだん近づくと、雪乃を救い上げ海岸へと運んだ。


-ゲホゲホ-


海水を吸い込んだせいか雪乃は盛大にむせる。


雪乃が生きてる・・・・と思った時、容赦ない平手が飛ぶ。


-パチン-


「・・・・・・お前は本当に馬鹿か」


一馬が雪乃を冷たく見下ろしていた。


それ以上は何も言わず、一馬は自分の上着を雪乃に羽織らせた。


一馬の上着は雪乃には大きく、雪乃の体をスッポリと覆い隠した。


「・・・・・・何で助けたの・・・・何で・・・・・」


・・・・・死なせてくれなかったの。



上着を一馬へと投げつけながら、雪乃は一馬を睨む。



一馬は一馬で冷たい目で雪乃を見ていたが・・・。



-パチン-


さっきよりも強く頬を打たれた。



信じられないという顔で一馬を見れば、一馬は雪乃を軽蔑したような目で見ていた。



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