色をなくした世界
「お前は・・・本当に甘えた奴だな・・・」


そんな事一馬に言われなくても雪乃が一番分かっていた・・・。


だから・・・・死のうとしたのに・・・。


「あんたには関係ないでしょ・・・・ほっといてよ」


一馬の顔が見れず、雪乃は下を向く。



「関係ある。お前が死ねば、俺が会社の奴らに責められる。迷惑だ」



なんて身勝手な・・・人の事は言えないが、雪乃は一馬の言い方に怒りを覚える。


「そんなの知らない。私には関係ない。私は・・・和君のところに逝きたいの・・・」


血を吐くような雪乃の叫びだった。


もう生きていくことが・・・・辛かった。


「お前は自分の事ばかりなんだな」


一馬が呆れたように溜息をつく。



今の雪乃には一馬の何もかもが憎かった。




「お前が今死ねば、会社の奴らも少なからず責任を感じる。お前を必死に探しているだろう雄大も傷つく。夫の両親も自分の息子を追ってあんたが死んだと知れば傷つく。それに・・・・」


そこで言葉を切ると、一馬は真正面から雪乃を見据えた。


「お前の愛した男は、自分を追ってお前が死ぬことを望むような男なのか?」


雪乃はハッと息をのむ。

そうだ…。


そんなはずはない・・・。和哉はそんな事望まない・・・。


誰より優しかった和哉は・・・・雪乃が死ぬ事を望まない・・・・。


分かっていたはずなのに・・・・・。
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