色をなくした世界
「できる事からやってみろ・・・・それでもお前が死にたいと思うなら・・・・」


夫の気持ちを無視して死ぬと言うのなら・・・・


「俺はもう止めない」


それだけ言うと、一馬は雪乃に上着をかけ帰って行った。



そこで雪乃の意識も途切れる・・・・。



夢を見た。



幸せだったころの夢。


夢の中には和哉がいて、私がいた。


「和君・・・・・?」


必死に呼びかけるが、和哉からは返事が来ない。


それでも必死に呼べば・・・・雪乃の好きだった笑顔を見せてくれる。



何故か・・・最後だと感じた。


これで本当に終わるんだと・・・・。


「和君・・・・?」


そう呟けば、初めて和哉が返事をしてくれた。


ただ一言・・・・。


「幸せに」


それだけ告げると和哉は光の中へと消えて行った。


和君・・・・・さようなら。


雪乃の言葉は和哉に届いただろうか・・・・雪乃もまた光の中へと吸い込まれた。
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