色をなくした世界
目を覚ました時、そこは病院のベッドの上だった。


「雪?雪?大丈夫?痛い所はない?」


梓が凄い勢いで雪乃を見る。


「・・・・・・ここは・・・・」


誰に聞くでもなく呟けば、雄大が梓とは反対から顔を出す。


「病院だよ。雪ちゃんが意識をなくして、すぐに病院に連れてきた」


心配そうな二人の顔が見える。


(・・・・・私・・・私・・・・・)


一馬の言うとおり自分の事しか考えていなかったと気付く。


(私があのまま死んでいたら・・・・)


心優しいこの二人を裏切り傷つけるところだった。その事実がいまさらながら雪乃の心に突き刺さる。


「私・・・・ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」


ごめんなさいを言い続ける雪乃を梓が優しく抱きしめる。


「生きてて・・・・良かった。本当に雪が生きてて良かった」


泣きながら良かったねと言う梓に、雪乃も涙が止まらなくなる。
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