色をなくした世界
反対からは雄大が優しく雪乃の頭を撫ぜていた。


「会社の人達も心配してた・・・命に別状はないって分かって帰っていったけど、また元気な姿見せてあげて」


周りを見ればこんなにも優しさが溢れていたのに・・・・今までの雪乃は気付いているつもりで、全く見ようとしていなかったのだ。


「私・・・・本当にごめんなさい」


謝る事しかできない。どれだけ皆に心配をかけたのだろう・・・・。


そしてどれだけ心配をかけてきたのだろう・・・。


「もう泣くなよ。雪ちゃんは生きてる。それだけで俺たちには十分だ」


雄大の言葉に梓も頷いている。


言いたい事もたくさんあるはずなのに・・・・雪乃の事だけを考えてくれる二人に涙はさらに止まらなくなる。


「ありがとう。ありがとう・・・・・私・・・・」


雪乃を愛してくれているのは和哉だけじゃない。


そんな事にもっと早く気付けば良かった・・・・。


雪乃がもう止まらないと言わんばかりに大声で泣き出す。


子どもの様に大声で泣く雪乃を、梓は抱きしめ、雄大は手を握る。


二人の温もりが・・・・生きているという何よりもの証だった。



和哉のいないこの世界を・・・それでも私は生きて行こう。



和哉が死んだ年の終わり・・・雪乃はそう決心した。
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