色をなくした世界
雪乃が外へ走っていくと、アズが寒そうに待っていた。


「アズ!!!ごめんね!!!」


文句の一つでも言おうと思い雪乃を見たが・・・雪乃の姿に止めた。


「また雪は転んだの?足・・・少しだけすりむいてるよ」


昔からよく転ぶ梓の親友は、この年になってもまだ転んでいるようだ。


はぁ・・・と溜息をつきつつ、梓は慣れたもんで雪乃の手当てをしていく。


「ほら。これでとりあえず応急処置は終わり。家帰ったらもう一回きちんと消毒しようね」


お母さんみたいと雪乃は思ったが・・・怖いので口に出すのはやめておく。


「今日は何食べるの?」


楽しみだねと雪乃が聞けば、梓の顔は少しだけ微妙なものになる。


理由を知らない雪乃は、気にせず続ける。


「どんなお店なの?」


雪乃と違い、梓は色んな店を知っていた。


昔和哉とご飯に行く時、よく梓に聞いて行ったものだ。


梓の選ぶ店はどこもおいしくて、和哉と雪乃は梓の食へのこだわりを見た気がした。


「今日は個室のあるバーみたいなところだよ」


梓がご飯も美味しいよと言えば、雪乃の顔はみるみるうちに輝く。


「楽しみだね」


笑う雪乃に、梓は心の中で謝る。


(ごめんね。騙して)



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