色をなくした世界
「酒があれば生きていける」


それはないだろうと思ったが、突っ込むのは止めておく。ご飯も大事だよ?


「雪はお酒飲めるの?」


あまり飲んでいなかった為か、飲めないと思われたらしい。


それにさっきトイレで鏡を見れば、顔が真っ赤だった。これじゃお酒が苦手と思われても仕方ない。


「昔はどれだけ飲んでも酔わなかったんだけど・・・苦手になったみたいだね」


雪乃の表情から、いつからというのを正確に読んだであろう一馬はそれ以上は何も聞いてこなかった。


根掘り葉掘り聞かない一馬の性格は雪乃にとって居心地がよく楽なものだった。


それをずっと見つめていた梓が雪乃を呼び出す。


個室に戻ってきて以来、梓は一馬から目が離せなかった。


雪乃から聞いていたものの・・・


「雪・・・一馬君って・・・」


雪乃が一馬を初めて見た時と同じ反応だった。


「和君そっくりでしょ・・・・性格は全然違うんだけどね」


ずっと見ている梓に気付いているであろう一馬。しかし全く気にもかけない。


「本当に・・・似てるのは顔だけなんだね・・・・」


でも・・・雪は・・・大丈夫なの?


梓は急に不安になった。


「雪・・・・一馬君に・・・惚れてないよね・・・?」


雄大と同じようなことを言う梓に雪乃は悲しそうに遠くを見る。


「アズも同じこと言うんだね・・・大丈夫だよ」


それだけ告げると席に戻る。


残された梓は雄大を思い出す・・・。


アズもと言った雪乃。恐らく雄大にも言われたのだろう・・・・
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