色をなくした世界
合コンも盛り上がり、何回か席替えをしたものの・・・何故か一馬と雪乃だけはそのままだった。

他の女子が一馬とは話が続かないと言った為でもある。


梓はあまりに和哉にそっくりな一馬に、近づきたくなかっただけの気もするが・・・。


「一馬の顔も見飽きたね」


失礼な事を平気で言えば、一馬は口をピクッとさせる。


「お前は・・・相変わらずの減らず口だな」


一馬が雪乃の頭を叩いた時、男性メンバーの一人が意を決したように聞いてきた。


「二人ってさ・・・実は付き合ってる」


さっきから周りを気にせず二人の世界を作っていた雪乃たち。周りからは付き合っているとしか見えなかった。


梓がそれはないと小さな声で言ったが・・・誰にも聞こえていない様だった。


「「付き合ってない」」


合わせたかのように重なる二人の声に、周りもはいはいとからかうような空気に変わる。


「本当に付き合ってませんから!!!」


必死な雪乃の訴えも軽く流されて終わってしまった。


散々身に覚えもない事でからかわれた挙句・・・言われた言葉は。


「二人先に帰ったら?」


だった。もう開いた口が閉まらない。


流石に梓もそれは駄目と止めに入るが、お酒で出来上がった人たちには敵わなかった。


雪乃と一馬は空気を読み、このままここにいてからかわれるよりはマシだろうと席を立つ。



そこに梓が「一緒に私も帰る」と声をかけるが、周りに止められていた。


雪乃は大丈夫だよと梓に手を振り、一馬と店を出て行った。
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