色をなくした世界
「そっくりでしょ?」


コーヒーを持った雪乃が戻ってくる。


「だから言ったの。あんまり良い思いしないって・・・・」


普通に考えて自分にそっくりな顔が遺影として飾ってあったら嫌だろう。


「・・・・あれは旦那さん?」


分かっていたが、敢えて一馬は聞いた。


「そうだよ。風間和哉って言うの。顔もそっくりなら、名前も似てるよね・・・」


遺影に向かって「ただいま」という姿が一馬には悲しかった。


「とりあえず飲みなよ」


雪乃は持っていたコーヒーを渡す。ソファーが一つしかない為、一馬の隣に座った。


「黙っててごめんね。一馬は死んだ夫にそっくりなの・・・だから初めて見た時ビックリした」

忘年会の日・・・和哉が生き返ったような気がした。


「まぁ・・・性格は全然違ったけどね」


そう笑えば、一馬はやっとコーヒーを受け取り一息ついた。


「ビックリしたけど・・・・これで分かった」


意味が分からず、雪乃が一馬を見れば一馬は雪乃を見ていた。


「たまに雪や雄大が俺を寂しそうに見ていたから・・・」


二人は無意識だったみたいだけどと雪乃に言うわけでもなく呟く。

雪乃自身言われるまで気付かなかった・・・
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