色をなくした世界
話が途切れた時・・・・雄大は持っていた一本の酒瓶を和哉の写真の前に置いた。


「和哉が唯一寝ずに飲めた酒だ・・・雪ちゃんには悪いが、今日はここで飲み明かさせてくれよ?」


雪乃の方をバツが悪そうに見る雄大に、雪乃は急いで3つのコップを持ってくる。


「私も付き合うわ・・・。今日は朝まで三人で飲み明かそう」

少し痩せた顔で微笑めば、雄大も日焼けした肌によく目立つ白い歯をだし笑ってくれる。


「そうだな・・・三人で・・・あの頃の様に・・・」


まだ和哉が元気だったころのように・・・。


雪乃は思う。


お酒を朝までは雄大なりの優しさだろうと・・・。和哉が亡くなったばかりの家で、雪乃が一人で過ごすことを心配し、お酒を持ってきた。雄大はそういう優しさを持った男だ。


実際雄大が来なければ、雪乃は最悪な事をしていたかもしれない。


一人で過ごすには・・・思い出が詰まりすぎている、この場所で。


チラッと雄大を盗み見れば、雄大も雪乃を見ていた。

普段は見せない雄大の眼差しに、まるで心の中までも見られているようで居心地が悪い。


ぶれる事なく雪乃を見ていた雄大は一言だけ雪乃に告げた。


「雪ちゃん・・・生きろよ」
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