彼は、理想の tall man~first season~
「こっちは、込み込みで268万円か」
「はい」
「こんなこと聞くのもあれなんだけど、いくらまでなら出せるの?」
中條氏はズバリ聞いて来た。
ズバリと聞かれたら、正直に言うしかないと思ったけど。
金額を言うのは憚られ、若干遠回しに――だけど、ズバリと答えた。
「それ以上は、出したくないです」
「アハハ、ま、そうだよね」
やっぱりそういうキッパリとした感じがいい――と、中條氏は笑っていた。
「この車はさ、どうしても欲しいの?」
私が買おうとしているカタログを見ながら、そう問う中條氏。
疑問符を顔に貼り付けて中條氏を見返すと、これまた意外なことを口にされた。
「コンパクトカー買って、必要な時は尚輝の車借りるとかじゃダメなの? この車って、尚輝の車とそんなに大きさ変わらないよね?」
「はい――まあ、そうなんですけど」
「今、電車通勤みたいだけど、車通勤は考えてるの?」
「たまには、したいです」
「ねぇ、そもそもさ、美紗ちゃんが車欲しい理由ってなに?」
「え? それは――」
私が一番聞かれたくない事を、中條氏はストレートに聞いて来た。