彼は、理想の tall man~first season~
私って、どれだけ流されやすい性格なんだろうとも思うけど。

でも、最初からコンパクトカーを除外していた私には、価格という観点から考えたら、ありかも――という選択になった。

いざ乗ってみて、外観と違って意外と広く感じた空間にも、ありかもって思っていた。

私が買おうとしていた車よりはひと回り以上小さいけど、運転席の空間は広く感じる。

普段乗るには、小回りの利く車の方がいい気もする。


「中は、どう?」

「意外とゆったりしていて、いいですね」


運転席に乗る私と、助手席側のドアの外に立って中の様子を伺って来る中條氏。


「これ試乗してみる?」

「でも、何回もじゃ――」


そんな会話をしていると、「それも気になる?」と。

中條氏の背後から松本さんが顔を覗かせた。


「今、用意出来るから試乗してみる?」

「――いいんですか?」

「もっちろん」

「あの、それじゃ、お願いします」

「はい、よろこんで」


にこりと営業スマイルを見せてくれた松本さん。

2児のパパというイメージが、イメージだけではなくなって。

家ではもっと優しく笑うんだろうな――なんて、じんわりと感じていた。
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