彼は、理想の tall man~first season~
松本さんを振り回してしまっていることに申し訳なさが募りながらも、買うなら営業マンは絶対に松本さんと心に決め、運転席から車内の内装を細かく見ていた。

松本さんは女性スタッフに近寄り何かを告げると此方に戻り。

「車回して貰うからちょっと待ってね」

助手席から覗き込みながら、私にそう言った。


「松本、この車種だと、どんぐらいいけんの?」

「んー、どうかなー」


中條氏の言葉に、苦笑いした松本さん。

運転席からふたりの様子を伺っていると――

「トータル200きって出せない?」

中條氏の言葉に私はドキドキし始めた。


「さっきの車種だと、頑張っても280がいいとこだろ? 対抗馬は260万。高いから買えないかもって」

「あーそう? 色々やってはみるけど」

「松ちゃんなら、やれちゃうだろ」

「うわ、よく言う」


助手席側のフロアーで談笑中の2人。

私からは松本さんに対しては、金額的なことは何も言っていない。

つまり、中條氏は中條氏なりになにか仕掛け始めたってことなんだろうか?

確かに、好き勝手オプションを付けていたら、300万近くになるとは思っていたけれど。

100万近くさい値差が出るなら、この車の方がいいのかも。
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