彼は、理想の tall man~first season~
店員さんが去って、する事がなくなり、向かい合わせで座っていることに、改めて気付いた私は、酷く緊張し始めていた。


「あの――中條さんは、車、本気で買われるんですか?」

「うん」

「結構、しますよね?」

「んー。俺は、あのセダンよりも、デカイのが気に入っちゃったから、余所で聞いてみて、最後は松本とやり合って決める」

「え、でも・・・・・・店舗違いでも同じ県内とかじゃ、確かダメですよね?」

「ああ、あのデカイのには兄弟車があるから、別系列の店で見積り取って、松本を落とす」

「強気ですね」

「価格でメリット出してもらえないとキツイからね。松本も、俺は自分から買うだろうっていうのが少なからずあると思うから。ちょっと焦らせて、こっちにもメリットをね」

「営業マンと営業マンの戦いみたいで面白いですけど、松本さんも契約してもらえるまでは、中條さん相手だと、気が気じゃなさそうですね」

「美紗ちゃんは、焦らなくていいからゆっくり決めなよ。俺は多分来週買うけど」

「はい、煮詰めてから決めようと思いますけど。でも、気持ちは9割固まりました」
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