彼は、理想の tall man~first season~

「今のところどれが候補なの?」

「勧めて下さったコンパクトカーにしようかと」

「あの車ならオプション付けても、まあまあ買いやすい金額だもんね」

「はい――手持ち、少しでも多く残したいんで必要最低限で充分かなって」

「お金は持ってたに越したことはないもんね」


緊張している割には、なかなか話せている自分に、ちょっと驚いた。

会話が詰まることもなく、車を買うという共通の話が出来て。


「ああ、煙草、吸いたければ吸ったら?」

「あ、すみません」


やっぱり女が――という、微妙に吸いにくくて出せなかった煙草も、中條氏の気遣いによってバッグから出すことが出来た。

近場に子どもはいない。


――よし!!

と、思って火を点けると、中條氏がライター貸してくれない?

そう言って、ポケットから無造作にタバコをテーブルに置いていた。

どうやら、吸うのは基本飲む時だけだけど、煙草がなくなるまではちゃんと吸うらしい。

ライターを常備していないが故に、いつも火に困ると言っていて。

私が渡したライターを「かわいいね」なんて言って、そのライターで火を点けていた。


ピンクと赤とクリスタルのラインストーンでデコってあるライターは、そういうことを趣味としている智子が、施してプレゼントしてくれたモノ。

私にはそういう、いかにも女の子ですというアイテムを使っていた中條氏の方が、よっぽど可愛く見えてしまった。
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