彼は、理想の tall man~first season~

「ミサも、ごめん!!」

「私は全然いいけど、」


ミサという名の彼女が俺に目を向けて来て、自然と目が合った。

その瞬間、俺は年甲斐もなく、うわ――と、思い。

俺の中に、先程とは全く違う部類の衝撃が走った。


「あの、申し訳ございませんでした。 背中、本当に大丈夫ですか?」

「・・・・・・」

「大丈夫、大丈夫! コイツ頑丈に出来てるから。それより、トモコちゃんは平気なの?」

「――あ、私は大丈夫です!! 今ので酔いが醒めました。 本当に本当に、すみません!!」


ミサという彼女の問い掛けに、何故か俺よりも先に、口を開いたのは小川だった。

そして、小川がちゃっかりトモコちゃんと呼んでいたことに、俺は若干ひいた。

ただ、トモコという子は、相変わらず真っ赤で、ペコペコと平謝り。

それは周囲の注目もあり、逆にこちらが恐縮してしまうくらいのものだった。


「あの、スーツとか、汚れなかったですか?」

「あぁ、大丈夫だよ」


彼女の再びの問い掛けに、今度は俺が応対。

不安げに俺を見ていた彼女は、少しだけ安堵の表情を見せた。


そして、トモコという子にブーツを履かせ始めた彼女の仕草を見ていた俺は――飲んでいても、意識はしっかりこの場にあるという雰囲気を感じていた。
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