彼は、理想の tall man~first season~
その義弟君とは、日本から出国する前は、たまに飲んでいた仲だとかで。
帰国後、一緒に実家近くで飲んだ時に物件を探すと言ったら、俺も引っ越したいから一緒に住まない?
みたいな展開になったようで。
「候補はどの辺なんですか?」
「んー、それがね、向かいのマンションなんだよね」
「向井のマンション? どこですか、それ?」
「いや、発音が違うから」
「え?」
「尚輝の所のさ」
「――え? むかいって、向かい側のマンションですか?」
「そう」
中條氏のまさかの発言に、ちょっと大きな声を出していた私。
中條氏の苦笑い混じりに頷いた姿にハッとして、思わず首をすくめた。
この席の近くに、人がいなくて良かったと、少し胸をなで下ろした。
だけど、中條氏が超ご近所に住むかも知れないの?
それって――。
「部署飲みの時、尚輝に勧められたんだ。後輩と一緒のマンションてのも微妙かと思ってんだけど、ツインマンションだって言うから」
私は声には出さずに黙って、静かに頷いた。
「間取りは大差ないって言ってたから、だから昨日お邪魔させてもらったんだよね」
「そうだったんですか」