彼は、理想の tall man~first season~
昔を懐かしく思い出していた自分に、気持ちが老けてきたかなとか思えて。
私は慌てて首をぷるぷると横に振った。
過去は過去だ――と。
今を、これから先を、どう生きるかが大事だぞ――と。
そう自分に言い聞かせながら、私は着いた駅のホームへと降りた。
いずれにしても、土曜日に中條氏と一緒に、松本さんの所へ行くことになっている。
素直な気持ちの流れの儘、全ては委ねればいいかなと――。
改札口を抜けるまで、あれこれ考えていた思考は、抜けた瞬間に、バッサリと断ち切った。
駅からマンションまで、果たして一体何歩で帰れるのか?
一歩一歩数えて帰る――という無意味な事をして、私は意識をそちらに集中させた。
「ただいま」
「おう、お帰り」
今日は尚輝の方が早かったかと思いながらパンプスを脱ぐと、足の締め付けが一気に解放。
「あー、疲れたぁ」
ホロ酔い加減からすっかり醒めて、少し汗をかいていた自分が嫌になった。
「歩いて帰って来たのか?」
「うん」
「電話くれたら迎えに行ったんに」
「んー、歩いて帰りたい気分だったから」
「今日、ヨガだったんだろ?」