彼は、理想の tall man~first season~

大学の構内で、名前を言うだけで呼び出せる女の子というのは、学内でかなりの有名人に違いなく。

ミサと呼ばれていた彼女を見れば、それは納得だったが――逆に常に注目を浴びてしまうであろう彼女に、少し同情した。


小川は勿体ない――だとか、痛いふりして近付けたのに――だとか、帰るまでブツクサ言い続けていたが。

俺に学生相手に被害者になれってのかよ、と――そんな突っ込みを、いれたくなった。

が――まぁ、確かに、あのミサと呼ばれていた彼女とは、知り合いくらいの関係にはなっておきたかったかも知れない。


ただ、縁というモノがあれば、きっとまたいつか、どこかで出会えるだろう。

この時はそんな風に、楽観的に考えていた。


しかし、社会人と大学生。

そんなに容易く縁なんてのがある筈もなく、見かけることすらなかった。


俺は唯ひたすらに、仕事に精励する日々を送っていた。


ただ――人生とは、人と人の繋がりで成り立ち。

そして、縁がある人ならば、それを繋ぎ合わせてくれる。


それから数年後――。

海外勤務が無事に終わり、本社に戻った俺には、それなりのポジションが与えられ、直属の部下も数人出来た。


そこから、俺の人生は――。
< 13 / 807 >

この作品をシェア

pagetop