彼は、理想の tall man~first season~
大学の構内で、名前を言うだけで呼び出せる女の子というのは、学内でかなりの有名人に違いなく。
ミサと呼ばれていた彼女を見れば、それは納得だったが――逆に常に注目を浴びてしまうであろう彼女に、少し同情した。
小川は勿体ない――だとか、痛いふりして近付けたのに――だとか、帰るまでブツクサ言い続けていたが。
俺に学生相手に被害者になれってのかよ、と――そんな突っ込みを、いれたくなった。
が――まぁ、確かに、あのミサと呼ばれていた彼女とは、知り合いくらいの関係にはなっておきたかったかも知れない。
ただ、縁というモノがあれば、きっとまたいつか、どこかで出会えるだろう。
この時はそんな風に、楽観的に考えていた。
しかし、社会人と大学生。
そんなに容易く縁なんてのがある筈もなく、見かけることすらなかった。
俺は唯ひたすらに、仕事に精励する日々を送っていた。
ただ――人生とは、人と人の繋がりで成り立ち。
そして、縁がある人ならば、それを繋ぎ合わせてくれる。
それから数年後――。
海外勤務が無事に終わり、本社に戻った俺には、それなりのポジションが与えられ、直属の部下も数人出来た。
そこから、俺の人生は――。