彼は、理想の tall man~first season~
営業内勤というのがその先にあったことを知らなかった私は、ただただ戸惑うばかり。
でも、そういうチャンスが巡って来るのなら、やってみたいという気持ちは湧き立つ。
「今後のこともあるから、今度ゆっくり飲みにでも行こうか」
「あ、はい」
仕事の話を飲み屋でするのは割と好きな私。
驚きつつも、そういう誘いなんだろうと思って返事をした。
よろしくお願いします――と、尻すぼみに言った私を見て、村岡部長はフッと笑った。
妻帯者有りなのに、普段はそんな雰囲気を出さない部長。
その部長は、社内のパートさんには、かなり人気で。
同期入社のメンバーも、部長をかなり慕っている。
仕掛りの仕事を済ませて、身の回りを整理して、私は早々に会社を出た。
書類は落とさないよう、厳重注意。
会社を出る時に、村岡部長が先方へ電話を掛けてくれて。
「小林部長もお忙しいでしょうから、うちの麻倉に届けさせますよ」
こちらから出向いて届けるよう伝えてくれていた。
相手に申し訳ないという気持ちを植え付けている辺り、抜かりない人だと感じさせる。
会社から徒歩で駅に向かって、電車を乗り継いだ。